chapter 4-4. 退屈、とか、一般受けしない、とかそんなことにならないだろうか

「4階の部屋」ではポワロは体調を崩し、退屈しきって不平を言っている。

ポワロが風邪をひいているところから、ドラマは始まり、面白い事件が3週間もないとミス・レモンに愚痴っている。

 

「灰色の脳細胞には刺激が必要なのです(an eternity for a brain like mine)」

 

気分転換にと、ヘイスティングスが芝居へと誘う。それが殺人事件を題材にしているのだが、ありえない人物が犯人になっていると言って、ポワロはカンカンに怒ってしまう。ポワロによると、犯行が可能な人物は執事らしい。

 

ホワイトヘイブンマンションで部屋に向かっている時でも、脚本家の筋書きには納得できないとヘイスティングスに怒っている。

すると、遺体を発見する。途端にポワロの風邪はどこかにいってしまう。

遺体があったのは3階、36Bである。遺体役を演じたのはコメディエンヌのJosie Lawrence。彼女はこの役で、テレビで初めてセリフのある役を演じた。

 

この回のヒロインはSuzanne Burdenが演じていて、この女性はポワロにとって「ふわふわのオムレツ」を作ってくれた愛しいイギリス人女性として記憶されることになる。このことは、ポワロのような男にとってどういう意味を持つのだろうか。

おそらく、ポワロは女性に対して少し距離を置くことでしか、愛情を持つことができないのではないだろうか。

クリスティはポワロのイメージを崩さないためにも、女性関係に関して踏み込んだことは書かなかった。ポワロはいつも「愛」の素晴らしさを語り、女性を称賛することもあるが、いつもどこかしら距離を置いている。私自身はそうでないにしても、なんとなくその気持ちは理解できる。

 

「ふわふわのオムレツ」はポワロのちょっと距離を置いてしまう性格の象徴で、これ以降女性を「愛する」という感情を抱くことはないのだが、このエピソードに私は心惹かれるものがあった。ポワロが本当の愛を経験したことがない、と深く後悔しているのだということが改めて分かった。

 

クリスティは原作で、ロサコフ伯爵夫人にちょっとした恋心を抱かせるような書き方をしているが、こちらの方はあまり心に引っかからない、そんな印象のエピソードだった。