chapter4 -5. 退屈、とか、一般受けしない、とかそんなことにならないだろうか

このドラマシリーズに参加してくれたSuzanneや、他の俳優たちは皆、ドラマに出演することを心から楽しんでくれていた。

皆、子供のころからポワロに親しんでいたようだった。私はこの仕事を引き受けるまで知らなかったというのに。ただ私は日を重ねるごとにポワロとうまく付き合って行けていると思う。

 

6作目と7作目では、ロンドンウィークエンドテレビがこのドラマに大金をつぎ込んでいることを身をもって体験することになった。

「砂に書かれた三角形」は、ギリシャの島でロケが行われ、撮影クルーは全員、島へと飛んだのだ。

 

7作目「海上の悲劇」ではポワロは1930年代製の素晴らしいヨットでクルーズをし、その間撮影クルーは地中海で仕事をし、色々な旧跡を巡ったりもした。

実際、この二作品はクリスティが旅行した時の経験に基づいて書かれおり、イギリスが舞台となっている他の作品とは趣が異なり、海がよくでてくる。

 

「砂に書かれた三角形」で、ポワロは子供用の木製人形を使い、腹話術を披露して見せる。

というわけで、私も視聴者が納得するだけの腹話術を習得する必要に迫られて、苦労した。

またクリスティは、気を付けてさえいればわかるような手がかりをあちこちに散りばめている。その手がかり全てに気付けば犯人が分かるはずなのだが、気づかなかければポワロが謎解きするのを待たねばなるまい。

 

クリスティは作家として優れた才能を持ち、読者に対して常に誠実であろうとした。私も彼女のその姿勢に従いたいと思う。全ての手がかりに気付いたのなら、ポワロと同じ結論に導かれるはずなのだが、普通は一つか二つしか気づかない。だからポワロは偉大な探偵なのである。

 

8作目の「なぞの盗難事件」は、5作目までと同じくイギリスで撮影された。

1936年に設計された新兵器と航空会社に関する話で、その頃は第二回目のヨーロッパ大戦が起こりそうな不穏な空気に包まれていた時期だった。

 

プロデューサーは年代物の飛行機をたくさんかき集めて、なかなか見られないそれはもう迫力ある絵面を構成し、キャストはキャストで億万長者役にはJohn Stride、政治家サー・ジョージ・キャリントン卿役にはJohn Carsonを当てた。

 

終盤のシーンで、この戦闘機の設計図を盗んだ犯人について語っていた場所は、田舎の立派な一軒家だった。ポワロが関係する事件の多くは、貴族や金持ちの屋敷で起こる。

 

「コックを探せ」がちょっと例外で、一般家庭に起こった事件だったが、ポワロは報酬を要求しなかった。ポワロはイギリスの上流階級の欠点を突っつくのを面白がる癖があり、good chapを大事にする彼らを少し嘲笑気味に見ている。