chapter 5-4. 木槌で頭を叩かれているような感じ

評論もたくさん書いてもらったが、ファンレターもたくさんいただいた。

まるで旧知の友人のように、見知らぬ方からの手紙を受け取ることになった。

それ以来、視聴者はポワロのどこに惹かれているのだろうか、と考えるようになった。

 

第一シリーズの反響は、私自身に対して、というよりは、ポワロに対する反応だった。クリスティが書いたポワロが、関心の第一番目だったからだろうと思う。関心が私にあったわけではない。

視聴者の心をつかんだ理由は、クリスティにあり、そしてその彼女が創造した探偵にある。

 

ポワロが優しい心の持ち主であるのは、クリスティがそう書いたからであって、私がそう変えたわけではない。

また、ポワロが常に礼儀正しく、女性に尊敬の念を抱いているのも、同じ理由だ。

ポワロが時に間違った文法で話し、ヘイスティングスがそれを直すのも、クリステのアイデアであって、私が考えたわけではない。

ポワロが友人たちの悲しみに対して敏感なのも、同じだ。

 

私がしたことと言えば、

ポワロとはこういう人ですよ、と表現して見せただけだ。

まあ、それが私の仕事なのだが。

私は原作と脚本に従っただけだ。

 

このようにしてITVでの放送がはじまったのだが、撮影が始まったころには考えてもいなかったが、ポワロは随分と人気があるのだということに初めて気付いた。

I cannot put my finger on precisely how he does, but somehow he makes those who watch him feel secure.

↑未訳

視聴者はポワロを見ているのが楽しいらしい。

なぜなのか、私にはわかりようもなかったが、ポワロにはそれだけの魅力があるのだろう。

私の演技が期待に応えられてよかったと思う。

 

視聴者からの反応がはっきりと分かるようになってきた。一晩で私宛の郵便袋はファンレターでパンパンになった。第一シリーズが数話放送された頃になると、一週間に100通のファンレターを受け取っていた。

ファンレターのほとんどが好意的だった。

 

まるで木槌で頭を叩かれているような感じがした。

一体何が起こっているのか分らなかったのだ。