chapter 5-5. 木槌で頭を叩かれているような感じ

ドラマが成功したことは嬉しいのだが、それ以上のなにかがあるようにも感じた。

私は俳優で、養わなければいけない家族がいるのだ。ファンレターも好意的な評論も有難いが、何より私は働き続けなければならないのだ。

 

テレビの仕事が二本きていた。

まずトム・ケンピンスキー作の「Separation」、これはポワロの撮影前に、ハムステッドのコメディシアターの舞台で出演したことがあってそれの映像化だ。

そしてEdward Bond作「Bingo」、ウィリアム・シェイクスピア役だ。

私はシェイクスピアを、ストラトフォード・アポン・エイボンに隠居し、金はあるが人生に嫌気がさしていて、一つのことに熱心だが、鬱な感じのある天才、として演じた。

 

どちらの役もポワロとは似ても似つかない。

だが、これらを演じることで、同業の俳優は、私がいろんな役をこなせる性格俳優であると分かってくれたように思う。

視聴者もそうだと思う。

 

とはいえ・・・

「名声」を手に入れて、確かに今までとはなんだか勝手が違うようになってきた。

ポワロの第一シリーズが放送されて間もなく、雑誌「Hello!」に私と妻の写真が掲載されていた。

これまでの私からは、考えられないことだった。

Pinnerの新居にいる私たちが撮られたものが、まるで王族の一員か何かのような扱いで、世界で成功を収めるセレブリティのような書かれて方をしていて、こんなことはまったく経験したことのないことだった。

 

現実はそんなものではないし、セレブリティなんかではない。

シェイラと私が本当に気がかりだったのは、このままPinnerに住み続けられるのか、ということだった。

ITVネットワークの一員であるロンドンウィークエンドテレビは、ブライアントと私にポワロの第二シリーズ10話の製作を打診した。

まだ最終決定はされていない。予算が決まっていなかったのだ。