chapter6-1. 彼はもっと人間味にあふれている

1989年の6月下旬、暑い夏の日だった。第二シリーズの撮影が始まり、私はボディスーツとシミ一つない衣装を身にまとい、自分の人生を変えたベルギー人の小男を演じていた。


そうすると、ポワロと私には同じような欠点というか特徴があって、似たような強迫観念を持っていることもわかった。

というか、第一シリーズを演じてみてわかったこと、と言った方がいいのかもしれない。


第二シリーズの第1話は2時間スペシャル版、「エンドハウス怪事件」である。ポワロがバカンスでイギリスの西地方に飛行機で向かうところは、一部分がロケである。ポワロはフライトをちっとも楽しんでいない。

というのも、ポワロは飛行機が苦手でそれを隠そうともしておらず、一方ヘイスティングスはそんなポワロの横で悠然としている。

私が書き綴っているポワロに関するリスト6番目「飛行機が苦手。酔うから」。なのでこのシーンはポワロの弱点がよくわかるシーンになったと思う。


今回の原作はクリスティが1932年に書いた長編小説で、推理小説の傑作としてファンの多い作品でもある。執筆から40年後に出版された彼女の自伝によると、クリスティはこの作品についてよく覚えていないという。

そういう理由で、批評家たちの評価は芳しくないが、私はこの作品はよくできていると思う。


ポワロとヘイスティングスは「the Queen of Watering Places」でイギリス西南部にバカンスに訪れる。滞在先は実在しない場所、Cornwellのセント・ルー、マジェスティックホテルだ。ヘイスティングスはこのホテルを「French Riviera」として思い出している。

デボン州のSalcombeでのロケが大半で、スタジオでの撮影は少なかった。興味をひかれたのは、クリスティは生誕地トーキーにあるインペリアルホテルからヒントを得ることが多いということだった。


ここにきて、私とポワロの人生の不思議な縁を感じることがあった。私の父はインペリアルホテルにサービス付きの部屋を持っていて、母はその部屋をよく利用していた。

なので、「エンドハウス怪事件」でポワロが歩いている道は、私も1980年代に歩いたことがあり、容易に想像できたのだ。


マジェスティックホテルで、ポワロとヘイスティングスは、やや陰のある、魅力的で若い女性「ニック」・バークリーと出会う。彼女は、町はずれの崖の上に建つエンドハウスの女主人である。

そして、先週のうちに少なくとも3度は命の危険にさらされている、とポワロは推測するのだが、ニックは取り合わない。

ところが、彼女と間違えて、いとこのマギーが殺される事件が起こる。


ディレクターは第一シリーズに引き続き、Renny Rye、脚本はClove Exton。エンドハウスには毎夜、イブニングドレスで着飾った女性やホワイトタイで盛装した紳士が国籍豊かに集い、食前酒にカクテルを飲み、ディナーをともにし、そしてダンスするのがお決まりだった。

ここでクリスティには定番の、現実にはちょっといそうにないサブ的な人物が登場する。エンドハウスに仕えているオーストラリア人の夫婦、車いすに乗った女性と彼女の世話をする夫、ポワロは彼らを「善良すぎるお人よし」と評価する。


ポワロにとって気の滅入るフライトから解放されたのち、ホテルの朝食でゆで卵が2つ供されるのだが、卵の大きさが同じではないと言って食べない。

これは私のポワロのリスト24番目「朝食にはゆで卵をよく食べる。二個以上の時は、必ず同じ大きさでなければならない。じゃないと食べない」