後宮小説/雲のように風のように

注意:
タイトルの作品について、ネタバレがありますので、気にするかたは、ご覧になりませんよう。

以下本文
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後宮小説」は酒見賢一氏の処女作で、第1回ファンタジーノベル大賞受賞作である。

三井不動産が一社独占スポンサーをはり、大賞はアニメ化することを前提に選考が進んだ、らしい。

1989年に受賞作が発表され、1990年のGWにアニメが放送された。

その時のタイトルが「雲のように風のように」で、ヒロイン銀河を演じた佐野量子が歌うED曲が、同じタイトルだった。
どっちが先かは知らないが、たぶん曲が先のような気がするが、どうだろう。
曲は失恋した女性の心持ちを歌った少し切なさのある歌詞で、愛する双槐樹を失った銀河の心情に重ね合わせて、当時のファンは聞き入っていた(と思う)。

原作の受賞が1989年のいつ発表されたかは分からなかったが、現在と同じスケジュールで動いているとしたら、12月に発表、年明けて春分の日に放送で、長編アニメ製作としては、中々にタイトなスケジュールかと推測するし(その業界の人間ではないので…)、実際かなりキツい進行だった、と何かで読んだことがある。

まあスタジオジブリだったら、絶対に納期的にも、予算的にも不可能であることは分かる。

キャラクターデザインを近藤勝也氏が担当したことで、ジブリっぽい絵柄になってはいるが、ジブリ作品ではない。
ただ当時の私は、そんなことまで知るよしもなく、ジブリ作品は好きだったので、何となく見慣れた絵柄のキャラクターも手伝って、大河ドラマ的ストーリーを、親しみをもってすんなりと入っていくことができた。

また、80分、最初から終わりまで一切CMを入れない、という三井不動産のキップの良さが光った。

ちなみに、翌年は同じように、鈴木光司氏の「楽園」が「満ちてくる時の向こうに」というタイトルでアニメになった。
こっちもちゃんと録画までして、繰り返し見たのだが、絵柄もグッと大人っぽく、内容も子どもにはよく分からなかった、というのが正直な感想で、今みたら違う感想かもしれないのだが、未だに原作を手に取っていない。

私はその後も、アニメ化された作品を楽しみにしていたのだが、その後の記憶がない。
どうやらファンタジーノベル大賞関連作品がアニメになったのは、この2作品だけらしい。

当時どちらもVHSでビデオが発売され、レンタルもあったと思うが(少なくとも「雲のように風のように」は近所のレンタルビデオ店で見かけた)、DVDになったのは、「雲のように風のように」だけで、英語版まで出ていた。「Like the clouds, Like the wind」
直訳やな…

我が家にリージョンフリーのDVDデッキはないのだが、英語版をみるためだけに、購入を考えてしまいそうだ。

私が小学生の時はバブル真っ盛りだったようで、妹がジュリアナ東京のお立ち台に立って踊るダンサーの真似をしていたくらいしか記憶がなく、何もいい思いなどしなかった、と思っていたのだが、このアニメが製作されたのは、バブルのおかげらしい。

今になって知る唯一の恩恵である。

そんな経緯はさておき、ファンタジーというアニメと相性のよさそうな冠を戴いた大賞を受賞したのが「後宮小説」という…
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「こんなのアニメ化できるかー!」
と誰かが叫んだとか、叫ばなかったとか

原作者 酒見賢一氏も、最初は「無謀なことをするものだ」と思ったというが、タイトルはひとまず横において、読んでみれば、確かに映像化不可な場面もあるが、ドラマチックなストーリー展開、個性的なキャラクターなど、大変魅力的な作品にできると思ったのではないか

どうでしょうか、そこのところ
監督 鳥海永行さま

実際、出来上がった作品は、時間や予算に制限があったと思わせる映像の雑さは見られるものの、原作の世界観を見事に表現していたと思う。
原作にはない素敵な台詞や場面も沢山あった。
(というか今見直したら、原作通りの台詞はほとんどなかった)

漫画雑誌「りぼん」「なかよし」を卒業した中学生だった私は、この歴史ドラマにはまり、テープが擦りきれるまで、とは言わないが、台詞を暗記するくらいには繰り返し見て、原作も分からないところはすっ飛ばしながら、何回も読んだのである。

たぶんこの時期にこの作品に出会わなければ、こんなに熱量を注がなかったであろう。

ただ、ハマったと言ってもその後中国語、中国史、中国文学を勉強しだした、ということもなく、強いて言うならアジア圏の女性の民族衣装って美しいな、と思った程度で、残念ながら進路や人生にまで影響はしなかったのだが…

それでも、この時期の熱量は自分でも呆れるくらいで、この作品について考えたことを文章におこそうと思う。

友人にこんなことを熱く語りだしたら、ただのウザイヤツである。

幸いなことに今はブログという、一方的に情報を発信するツールがある。

今、この作品についてググっていたら、私と同じようにハマった方もいらっしゃることがわかったので、まあそういう方たちが、何かの拍子に当ブログにたどり着いて、暇潰しにでも読んでいただけたら、幸いかな、と思う。

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