「後宮小説」の作品説明に「宮女候補が実は皇帝、という意外性」みたいな一文がある。
私は、アニメを先に見ていて、その時一緒に見ていた母が、
双槐樹の初登場シーンで「きっとこの人が皇帝だよ」と呟いたのである。
これは、ミステリードラマで、まだ事件も起こっていないのに、犯人がわかってしまったのと同じである。
なかなかヒドイ発言である、母よ…
と言う理由から、意外も何もなかったという、かなり口惜しい経験をした私は、アニメを見ていない友人に原作を強引に薦め、感想をきいた。
聡明なる我が友人は、原作でも双槐樹登場と同時に、皇帝だと気づいたらしい。
いったいこの本を読んだ何%の人が、銀河と同じ時点で双槐樹が皇帝だと知ったのか、大変気になっている。1%くらいか
というのも、そこそこ真面目に読んでいれば、双槐樹と玉遥樹が皇族であることは気がつくように記載されているからである。
百歩譲って、素直に双槐樹が女性だと信じ続けるのも、文字しかない原作では不可能ではないかもしれない。
しかしアニメでは相当な無理があった、と言わざるをえない。
確かに、双槐樹のキャラデザインは中性的だった。銀河が女性だと勘違いする、という設定のためか、ご丁寧にアイシャドウまで施されている。
しかし、ヘアアクセサリーは女性ものにしてはちょっとゴツめ。
極めつけはやはり、声、だろう。
双槐樹の演技がダイコンだった、というコメントも見かけたが、私はそこまでとは思わなかった。
ただ、佐野量子さんや高畑淳子さんが、声優ではないのに違和感なく演じていたのに比べると、確かに笑也さんの声は浮いていた。
「となりのトトロ」で糸井重里さんの声が浮いていたのと、程度の差はあれ、似ている。
ただ、浮世離れした、中性的なとらえどころのない存在を現す、という点では成功していたと思うし、私には笑也さんの柔らかい声の響きがとても魅力的に聞こえたのだった。
なので、当時どうやって調べたのか忘れたが、市川笑也さんがDJをしていたラジオ番組をきいたりして、「 双槐樹の声だ!」とトキメイたのも懐かしい想い出である。
また、主要な人物二人に声優をあてなかった理由、歌舞伎役者という選択肢と採用した理由、そして市川笑也さんはなぜ引き受けたのか、その経緯について私は全く知らない。
仮にオーディションがあったとしても、歌舞伎役者が応募するとは考えにくい。
話がそれたが、いくら女形とはいえ、男声は男声だった。舞台ではソプラノボイスな裏声で発声しても、アニメでそれはしなかった。双槐樹は男だし、年からいって、声変わりも終わっている。
という上記の理由から、言われなくても、双槐樹が男だと気付いた可能性は高い。
アニメでは双槐樹は女装している、とは一言も言っていないし、実際銀河も女大学で双槐樹に会うシーンはなかった。後宮に身を隠していた、としか説明されないから、最初から最後までアイシャドウを塗り、イヤリングをつけるちょっと奇妙な青年になっていた。今思うと、だが。
原作では、はっきりと女装して、とあるから、皇帝として初めて銀河のところに通った、というか顔を会わせたときは、それなりの男性らしい格好をしていたと想像する。
いや、そうであってほしい。
だって書いてないし!
そんなこと!!
#後宮小説 #雲のように風のように #双槐樹