カオスという存在

混沌と名付けられた登場人物がいる

名は体を現すという表現があるが、この人物は、存在そのものを現している

後宮小説」の後半、反乱軍(といっていいのか分からないが)が一国の太平を脅かし、度重なる幸運によって、王朝を滅亡させた張本人なのだが、本人が心の赴くまま行動した結果、銀河はじめ宮女たちを救いだすのも、この人物である。

この人物がこの物語を動かしているといっても過言ではない。

原作では、一見好き者の風来坊で、書を好むという教養を持ち合わせ、建前や理論ではなく、自分の心が感じたままに行動する、本人以外からすると風のように気まぐれな人物である。

原作者がアニメにどうしてもいれてほしかったのは、混沌と平勝が遊郭で遊びまくる場面だという。

そんな混沌だが、アニメでは、原作より、もう少し思索的な人物に描かれていたと思う。
遊郭で遊ぶこともなく、平勝の良き(?)相談相手、参謀といったところか。

原作にはなく、アニメに入れられた以下のシーンはとても素敵だった。

混沌は素乾城に乗り込んで、気が済んだし、正直飽きていたので、「もう反乱ごっこはこの辺りにして、金目のものを奪って、遊び暮らそうや」と持ちかけるが、
長い付き合いにおいて一度も混沌に逆らったことのない平勝が、玉座に目の眩んだ結果、初めて逆らう。

混沌は、そんな平勝を説き伏せることもなく、「お前との付き合いもこれまでだな」と去って行く。

ここまでは原作通りだ。

アニメではその後、玉座に腰かけた平勝の姿が見えなくなったところで、振りかえって、呟く。

「皇帝になるにはな、平勝、器量ってもんが必要なんだよ」

混沌という人物が、原作では風のように軽い存在に終始したのに対し、アニメは少し重みのある人物に変わっていた。

小林昭二さんの演技も、光っていたし、近藤勝也さんのキャラデザインも秀逸だった。混沌という言葉をイメージした顔ということで、ちょっと気を抜くと、顔として成りたたず、難しかった、とおっしゃっているのをなにかで読んだ。

まあ、どっちがいいかは個人の考えや好みだと思う。

ただ、アニメにしろ原作にしろ、混沌に人望はないらしい。本人も必要としてなさそうだが

#後宮小説 #雲のように風のように #混沌