木ではなく、人のほうの 双槐樹の服装について、原作では以下のように書かれている。
髪に被せるショール(髪巾)、厚手の生地であつらえたワンピース(女装のためかと思ってたら、皇帝としても着ていた)、ブーツ(たぶんニーハイ)まで、すべてを黒で統一している、という。
アニメでは、黒を基調としながら、オレンジだの紫だの、それなりに色が入っていた。
全身黒、というファッションは私にも自分の経験として、ある。
双槐樹と近い歳頃、私は黒ばかりきていた時期があった。
理由はわからない。
向田邦子も若い頃、黒ばかりきていて、クロちゃん、と呼ばれていた、と書いていた。
「魔女の宅急便」ではオソノさんが、「黒は女を一番美しくみせる」とキキを励ましていた。
ん?
双槐樹は男だったな…
私は自分を美しく見せようなどと思った訳ではない。
ただ、着たかったから着ていたのだが、それから、数十年たった今、黒は選ばなくなった。
理由はいくつかある。
歳を経ると、黒を着るとフケてみえる。
また、全身黒は、理由を聞かれやすい。
「法事でもあったん?」
オールブラックを貫いている有名人といえば、アナ・ウィンターの片腕だったグレイス・コディントンぐらいしか思い当たらない。
私は今、全 身黒のコーディネイトは自分を目立たせないようにしたいとき、または、弔意を表す時に着ると、決めている。
双槐樹は自分が、黒一色の理由を、学名「コリューン」が漆黒の花をつけるから、と答えているが、それだけではないと思っている。
この年頃特有の嗜好ではないだろうか。
だから、 双槐樹の全身黒のファッションは私にとって、若い人の特権、と写っている。
と、前回に引き続き、木だのファッションだの、双槐樹の外見にしか私は書いていないことに、ここまで読んでくださった方はお気づきだと思う。
外見がいかに女性的であっても、中身はちゃんとした男性である 双槐樹の内面に、私はなんの想像もできないでいる。