長編ですが、文体が柔らかいのと、伊勢物語を知っていると「あー、あれをここに、持ってきたんやね〜」というやや上から目線で、サクサク、スルスルと読めます。
西の京の女の出番がホント一瞬だった。
でも一番、艶っぽいハナシでしたね。作者の肩入れ具合がよく分かる
藤原高子はヒロインだけあって、後半けっこう出てきたのですが、稚児と後宮の女官の恋バナを、業平と高子にすり替えるという「は、はあ?」みたいなこともあって「マジかよ~。。。」と苦笑いした。
伊勢の斎宮との恋のハナシに移る頃には「なんかもう好きにしてくれ〜」みたいな感じに私がなっていて、秘密の出産とか、もうどんだけメロドラマやねん、とここでも苦笑。
業平、子供がアチコチにいるけど子育てに関われない、ちょっと可哀想なパパ。。。
。。。
あー、私って性格悪い!
唯一、私が血の通った人間として見られたのは、業平の正式な妻でしょうか
3日、義理で通っただけで夜離した夫を憎む妻
もうここだけだったよね
人間的な感情を感じたのが
業平が50歳を過ぎて残るページもわずかになった頃、「おいおい、伊勢物語といえば、の九十九髪のエピソードはすっ飛ばしかーい」、と思ったらまさかの思い出語りで登場
とはいえ、やっつけ感が否めなく、なんのヒネリもなく、わざわざ出す意味あったんかい、という。。。
「3年を君に捧げて待ちわびて 今夜うたれるはずのピリオド」
「待つという愛のかたちもなくなって 私が選ぶこれがピリオド」
なのですが、そのエピソードは完全すっ飛ばし、
でしたよね?
私、見落としてる?
(ただすっ飛ばしたとしても、このエピソードの男を業平にして書くのは非常に難しいのは理解する)
くたかけのエピソードも好きなのですが、こっちは部下のエピソードとして書かれてた。
業平が50過ぎた頃から「俺は短歌に生きた」みたいな流れになるのが唐突で、ならもっと創作の苦悩とか、漢詩ではなく何故平仮名の短歌にチカラを注いだのか、そういうのを若い時に入れて欲しかったなあ。。。
という、まあ全体にツッコミしかなかったな、という感想。
ただ描写はすごく丁寧で細かくて、目の前に登場人物がいるかのように描く様は、すごいなと思いました。
もし友人に「伊勢物語に興味あるんだけど、何読んだらいいかな?」ってきかれたら「俵万智の『恋する伊勢物語』」って答えるけども。。。