「わりなき恋」 岸恵子

岸恵子さんの「わりなき恋」を読みました
この本の存在を知ったのは、「トヨトミの野望」です。


還暦前後の男性と、古希の女性のラブストーリーで
岸恵子私小説ではないかとの噂がある作品です

相手の男性も特定されていて、岸恵子とお付き合いされていたことは公然の秘密といったところのようです


ただ、岸恵子自身は
「相手が誰とか、そんなのどうだっていいじゃない! 私がこの作品で書いたことをきちんと読んで!」
ということで、
まあ世間というのは下世話なほうにしか興味がないんですな

岸恵子自身が書きたかった内容が評価されるかどうかは、50年後くらいにわかるのではないかと思います

読んで素直な感想は
70前後の女性がバリキャリで働いているというのは珍しいし、
教養もあって行動力もあって
その女性を愛せる男というのは
やはりそのあたりの並の男ではない

そして、私の想像通りの
プレイボーイ様だった


いや、もうマメ

激務の合間をぬって
相手の女性の著作物を全て読み
好きなシャンパーニュを覚え

そのシャンパーニュを大阪から東京に向かう新幹線の中で、冷えピタを何度も貼り直して冷やし続ける可愛さったらないわ!


このアイデア岸恵子の創作なのかはわからないが
自分を驚かせたくて、超エグゼクティブな男が新幹線の中でワインボトルに冷えピタ貼ってるところを想像しただけで
恋に落ちるわ

他にも色々とマメなところがあって
プレイボーイというのは
外見も備えた上で、このようなマメさが必要なのだよ
と思うと
いやスゴイ人種だなあ、と。

女を消耗品のように捨てていく男はプレイボーイ、遊び人とはいいません、私にとって。
「クズ」といいます
あしからず

私がこの小説を読んで一番グサリと刺さったのは以下の一文であります。

「世間というものが、自分で物事を見極めたり、考えたりすることに怠惰で、大勢に流され、柔軟性に欠け、ちょっとでも異質なものは出来合いのカテゴリーに嵌め込んで雑に始末してしまう」

主人公の恋人も表現は異なりますが、世間というものがいかに表面的なことしか見ずに判断するか、というセリフを吐きます。

主人公はフリーランスなので
「世間なんか」と反発する気持ちが強いのですが
恋人は大企業の経営者なので、世間がどう判断するか、というのも考慮した上で行動する傾向にあります。

私は上記の文は
岸恵子だから書けた文章であって
(私はあまり小説を読まないので解らないが)
一見してきらびやかに見える彼女の人生で、抱えたものを現しているように思いましたし
彼女ほどでもなくても
それなりに誰もが思うことじゃないかな、
あ、いや
私は結構思ってます

#わりなき恋
#岸恵子