吉野君の行方

荷葉の女
正確に言うと唯恵(吉野君)と、深夜に石山寺のお堂の裏で
殺人計画の話をしている時、
闇夜にまぎれて「荷葉」の香りが漂ってきたことに気付いて

「あ、荷葉が」
と呟いてしまった為に、唯恵に毒殺されてしまった、なんとも気の毒な登場人物

しかも荷葉の女がなぜ唯恵と組んだのか、
物語の中で詳細は一切明らかにされず
私の中では若干消化不良気味の人物であります


唯恵は、この荷葉の女だけでなく
三条邸放火により、10人以上の殺人に関わっている

最後、鷹男に刃を向けたのは
藤宮様の言葉を借りて
「微笑ましい兄弟喧嘩になるはずだった」
と解釈できても

死んでいった者たちは報われない。。。

自分とは全く関係ない兄弟喧嘩に巻き込まれて死ぬなんてあんまりだ
現在の日本なら、どんな理由があろうとも極刑だろう


鬼になった吉野君、という表現を瑠璃はしているが
正確に言うと「殺人鬼」になった、である

放火の犯人が分からないときは
「とっちめて謝らせてやるんだ!みんなの敵をとるんだ!」
と泣き叫んだ瑠璃が
犯人が吉野君と分かってしまうと
「逃げて!」
と命がけでその手助けをし、
「吉野君を鬼から人間に戻してみせる。だから吉野で会おう」と約束までする。
また、鷹男も唯恵が異母弟であることがわかると捜査を骨抜きしてしまう

やっぱり特権階級としての。。。
と、感じてしまうの私が庶民だからか。。。


で、大量殺人犯になってしまった息子を見て、
母である佐子姫は何を思っただろう

えーっと
佐子姫は生きてる、ってこといいんでしょうか?
死んだっていう表現もなかったよね?

吉野君は太刀傷を負いながら
虫の息ででも、吉野には向かったんじゃないだろうか

で、再会を果たすことができたのは
母である佐子姫かもしれない

だから、もしかして
母親の腕の中で死んでいったのかもしれない
ピエタ像のキリストみたいに

母親と共に、御仏の元でこれまでの罪を悔いながら

父親に拒絶された息子の話というと
漫画では萩尾望都の「メッシュ」を思い浮かべる

メッシュは、一度は存在を否定しておきながら、自分を精神的にも肉体的にも支配しようとする父親を殺そうとし

唯恵は、いかなる理由があったにせよ、自分の存在を最後の最後まで認めることができなかった父親を、想いながら、焼死する覚悟を決めている

どちらも、行動の違いはともかく
父親が10代後半の少年から青年になろうとする二人の心の「錨」になっていることに違いはない

まるで自分の存在価値が父親の中にしか無いみたいだ

その「錨」から、
どうやったら開放できるのだろう

生きてさえいれば、
その時を得られるかもしれない

生きて新しい家族を持つこと、愛する人をみつけること
くらいしか、私には思いつかないけれど

#なんて素敵にジャパネスク
#瑠璃
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